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とあるオクサマのニチジョウ
第15章 Scene.05
「…真希のせいじゃないもん………」
周りに人影が無くとも、言い訳を繰り返していた真希。
小道の入り口の前を再び通り過ぎた時は、気恥ずかしさから俯き気味に過ぎる程だった。
「こんな暗いのが悪いんだもん」
決して方向音痴を認めようとしない真希は、言い訳を繰り返しながら先へと進む。
飛び出してきてから数十分。
クマさんパジャマで歩き回る恥ずかしさを感じるよりも、一刻も早く恭子の家へと着きたい真希。
方向音痴に依って邪魔をされているとは思わずに、体力に任せて小柄な体で走り回っていたのだった。
「…あれ?」
人影が皆無な深夜の住宅街。
しかし、皆無であっても、誰も出歩いて居ない保証は何処にもなかった。
「んにゅ?」
不意に掛けられた声に、真希は脚を止めて振り返る。
「あぁ…やっぱり………」
真希の視界に飛び込んだ大柄な体躯の男は、柔和な笑みを浮かべた。
「んむむぅ?」
親しげに言葉を吐き出した男とは対照的に、真希は人差し指を顎に当てて小首を傾げる。
深夜にスーツに着られた感のある大柄な男。
恐怖感を感じさせはしないものの、やはり深夜に声を掛けられれば警戒するのも当然だった。
「あれ…? 覚えて…ないかなぁ………」
見た目とは不釣り合いな程に優しい口調で言葉を吐き出す男は、一定の距離を置いた儘で視線を向けてくる真希に困惑の表情を浮かべるのだった。