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不器用なくちびる
第20章 【椎名 16才】
「椎名〜!起きなさ〜い!」


「………」


今朝も人の部屋に勝手に入って来て
ザザッとカーテンを開ける。
住み始めて、まず遮光カーテンを買いに
走ったくらい日当たりのいい部屋で
それ以上眠ることなんて出来やしねえ。


「…うるせーな…今日…休みだろ…」


「私は毎朝この時間に起きるの!
せっかく朝ごはん作ったんだから
椎名ももう起きなさいっ!」


この女…おやじさんの娘の桧奈って奴。
頼んでも無いのに毎朝俺を叩き起こしに
来やがって…いい加減犯してやろうか。

俺はしぶしぶ食卓に座り、桧奈と
向かい合って朝食を食べ始めた。
おやじさんは散歩が趣味で、桧奈より
さらに早起きだからもう家に居ない。

あ、この卵焼きすげえうまいな…

桧奈の作る飯は、正直
どれもすげえうまかった。
中学の時に母親を亡くした桧奈は
その見た目からは想像できないけど
家事全般を器用にこなす女だった。
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