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不器用なくちびる
第3章 初恋
今日も帰り際に橘くんと話していると
椎名が少し離れたところから
合図を送ってきた。
今日も来いっていう合図を…


「もしかしてまだ何かされてるの?」


橘くんが心配そうにこちらを見ていた。
あれ以来椎名の話をするのは初めてで…
橘くんとはだいぶ仲良くなったけど、
起こったことを消せる訳ではないよね。


「大丈夫、大丈夫!何もないよ!」


笑顔で答えた。心配かけたくないし…


誰にも知られたくないよ。
惨めな私の本当の姿…


そこに春菜ちゃんがやって来たので、
橘くんは少し納得いかないような
顔をしながらも
軽く手を振って帰って行った。


「栞〜!本屋付き合ってくれない?」


「春菜ちゃん…今日はごめん。
用事があって…」


「また〜?最近忙しいね〜
彼氏でもできた⁈もしかして橘とか⁈」


「違う、違う…
橘くんはそんなんじゃないよ。
私は吉井くん一筋だし///」


春菜ちゃんにも本当のことは言えない。
でもまだ吉井くんが大好きなのは本当。
休み時間に橘くんと話すことが
増えたのもあって吉井くんを
見に行く機会は減ったけど…
私はそれでいいと思っていた。

私は汚れてる…
吉井くんにこれ以上近づきたいなんて
贅沢はもう言えないよ。
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