この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
姫はひそやかに咲き乱れる~戦国恋華【れんか】~
第3章 転機
月丸が―、たった一人の弟が重い病の床で自分に逢いたいと泣いているのだ。
徳姫には歳の離れた弟が一人いる。父嘉政には妻楓の方の他に側室はいなかったため、長女徳姫の誕生以来、十年ぶりに生まれた嫡男の誕生は両親を歓ばせた。だが、この幼い弟は生来、ひ弱で、病がちであった。
姉の徳姫が幼いときのように野山を駆け回るわけでもなく、城の奥で侍女たちと手鞠で遊ぶ方を好み、父などはよく〝徳と月丸が入れ替わっておったらのう〟と冗談に紛らわせて言っていたものだった。
徳姫には歳の離れた弟が一人いる。父嘉政には妻楓の方の他に側室はいなかったため、長女徳姫の誕生以来、十年ぶりに生まれた嫡男の誕生は両親を歓ばせた。だが、この幼い弟は生来、ひ弱で、病がちであった。
姉の徳姫が幼いときのように野山を駆け回るわけでもなく、城の奥で侍女たちと手鞠で遊ぶ方を好み、父などはよく〝徳と月丸が入れ替わっておったらのう〟と冗談に紛らわせて言っていたものだった。