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姫はひそやかに咲き乱れる~戦国恋華【れんか】~
第1章 始まりはいつも雨
されど、父上。私が長尾さまを厭うは、彼(か)のお方が戦場を鬼神のごとく駆け回るゆえではございませぬ。あの方は聞くところによれば、戦が終わりし後、許しを乞うて逃げ惑う罪なき女子(おなご)衆、幼い子ども―赤児に至るまで敵方の者は皆、惨たらしく殺しておしまいになったとか。私は、長尾さまのその心根が厭なのでございます。武将が戦場で鬼になることはあっても、ひとたび戦が終わった後もまだ鬼の顔を見せるとは、それこそ彼のお方が真の鬼だという何よりの証ではございませぬか。