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姫はひそやかに咲き乱れる~戦国恋華【れんか】~
第4章 花冷え
邦昭の言葉は短く素っ気なかったが、存外に嬉しげな響きがあった。
「今朝、京に向けて出立する」
意外な言葉に、徳姫は眼を見開いた。
「さりながら、私はまだ何も致してはおりませぬ。御台所さまに文の一つもしたためてはおらず」
「まあ、それは良かろう。こたびの上洛は将軍家にご挨拶するというよりは、長尾邦昭の威信を天下に広く知らしめるための賑やかしのようなものよ。次に上洛するまでには必ず、御台さまと誼みを通じてくれ」