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姫はひそやかに咲き乱れる~戦国恋華【れんか】~
第4章 花冷え
もし、自分が御台所珠子に書状の一つでも書いていれば。珠子から氏家に邦昭は心から信頼するに値する人物で、将軍家と幕府に忠誠を誓っているのだと伝えて貰っていれば。
もしかしたら、邦昭はこのような形で死ぬことはなかったかもしれない。
嫁いで四月(よつき)近く、時間は十分すぎるほどあった。元々、徳姫はそのために嫁いできたのだ。
御台所珠子と親しくなり、その良人である将軍を懐柔すること、それが徳姫に課せられた使命だった。