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姫はひそやかに咲き乱れる~戦国恋華【れんか】~
第4章 花冷え
如月の終わり、徳姫は邦柄から求婚を受けた。今から丁度ひと月あまり前の話だ。良人邦昭の四十九日の法要を終えたその日のことだった。
既にその時、徳姫の懐妊は知れていた。彼女はむろん、邦柄の申し出を丁重に辞退した。徳姫に邦柄は真摯なまなざしで言った。
―腹の赤児(やや)は、私の子として育てれば良い。この子は邦昭どのの忘れ形見、長尾家の嫡流です。私はたとえ何人の子ができようと、家督は正当な後嗣である邦昭どののお子に譲るつもりなのですから。
既にその時、徳姫の懐妊は知れていた。彼女はむろん、邦柄の申し出を丁重に辞退した。徳姫に邦柄は真摯なまなざしで言った。
―腹の赤児(やや)は、私の子として育てれば良い。この子は邦昭どのの忘れ形見、長尾家の嫡流です。私はたとえ何人の子ができようと、家督は正当な後嗣である邦昭どののお子に譲るつもりなのですから。