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姫はひそやかに咲き乱れる~戦国恋華【れんか】~
第1章 始まりはいつも雨
その傍らで、当人の徳姫は毅然とした面持ちで端座しており、一言一句たりとも老薬師の言葉を聞き洩らすまいとするかのように見えた。
彼が気の毒ではあるが、御子をお望みになられるのは諦めた方が良いと控えめではあるけれど、きっぱりと告げると、楓の方は〝ひっ〟と小さな声を上げ、それきり扇で顔を覆い隠してしまった。肩を震わせて泣いている母の傍らで、十九歳の娘は泣き叫ぶどころか眉一つ動かすことはなかった。