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第14章 熊谷の幸運、都の不幸

一瞬、熊谷を突き飛ばして出ていこうかという考えが浮かんだ。

しかし今さら違うと言っても信じないだろうし、わざわざ母親の秘密まで晒す必要はないんじゃないかと思い直す。


どちらにしても、サヤが『母親がレイプされて生まれた子供』であることに変わりない。

『１７年前の事』と言われて冷静さを失ってしまったのが都の敗因である。

落ち着いて考えれば当事者さえ未だに信じられないような一家の悲劇を、他人が知っているわけがない。

最初に突っぱねなかった時点で、勝負はついていたのだ…