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剣道少女の憂鬱
第20章 狂い咲き
―――…

「サヤ先輩、来てくれたんッスね!嬉しいッス」

サヤが茶室の襖を開けると、奥で寝転がっていた馬面がピョコッと立ち上がって目を細めた。

中庭にポツンと建つ茶室は、茶道部が廃部になってからは施錠されていて近づく生徒もいない。
馬面は特技を活かしてカギを開け、ニキビ面を出し抜いてサヤをここへ呼び寄せたのだ。

「ご主人様に呼ばれましたから…」

「あ、あの俺、名前で呼んで欲しいんス!た、拓馬っていうんスけど、俺…」

「拓馬さま?」

「そーいうんじゃなくて…できれば親しげに…呼び捨てか…あ〜でも、君付けも捨てがたいッス〜」

頭を抱える馬面に向かって、
「拓馬…君?」
ポツリと呟く。



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