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第9章 出立前夜

十年間、リノはハクトの傍で過ごしてきた。
文武に優れ、国の状況を把握し、国を取り巻く問題への解決策を探り、良い国にしようとするその姿だけを見れば、なんと強く完璧な人間だろうと讃える者がいる。だから、ハクトはまだ二十三の若者であることを忘れてしまいそうになる。
心まで強い人間など、いない。
ハクトの周りには、彼を敵視する者や媚びへつらい利用しようとする者が多く、そのような者達と関わる度、彼の心は疲弊していく。