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大蛇
第2章 危険な出会い
休暇が終わり、ルロイは下界に戻ってきた。
人間の住む世界から離れていたのはたった一か月間だけだったのだが、彼にとってひどく久しぶりに感じられた。
厳しい自然界とは異なり、街中では気を緩めていても命の危険がほとんどないことに、ルロイは改めて驚く。
だが彼はいまだに修行中の感覚が抜けず、必要以上に神経を尖らせて通りを歩いた。
ルロイは、道行く女たちに目をやり、修行の「成果」を確かめようとした。
五月の爽やかな日差しの下、女性たちの胸元は空気に晒されていた。
ほんのり汗ばんだ健康的な若々しい肌は、世の男たちを虜にする力があるが、ルロイは彼女達の体に打ち負かされなかった。
彼は欲望のその先にいたのだ。
ありふれた美しさ、快楽のための肉体に溺れる程、彼の精神は柔でなかった。
ルロイは己の欲望に打ち勝ったことを確信し、会心の笑みを浮かべていた。
しかし、そんなルロイの禁欲を打ち破る魔物が、彼のすぐそばに迫っていた。
ルロイは自宅に戻ると、アパルトマンの大宅から手紙を受け取った。
「軍の方が見えていたよ。ルロイ君が留守だから預かっておいたんだ」
彼は特に何も考えず、封を切って手紙を読んだ。
彼の目には、「昇格」の文字が飛び込んできた彼は急いで軍服を身にまとい、軍本部まで飛んで行った。
欲望を抱くことを自ら禁じたルロイにとって、出世欲だけが唯一許された欲であった。嬉しくないはずはない。
ルロイは、襟を正してボーモン大佐に挨拶をした。
「お手数をおかけして、申し訳ございません」
ルロイが頭を下げると、ボーモン大佐は笑顔を浮かべた。
「いやいや、私こそ休暇中に済まなかった。どうだい、体を休めることができたかい」
「はい、お蔭様で」
ルロイがそう言うと、ボーモン大佐は咳払いをし、本題を切り出した。
「君は今日から中尉だ。これが階級章だ、つけたまえ。君はこれから私の部下になるのだ。その覚悟はできているか」
ボーモン大佐はルロイの目を鋭く覗き込む。
短く刈り込んだ金髪の髪、冷たく光る緑の眼を持つボーモン大佐は、軍内部きっての切れ者であった。
彼の放つオーラには、ナイフのような殺気が満ちている。
ルロイはビシビシと伝わるボーモン大佐のオーラに気圧されるどころか、迫り来る空気にむしろ快感さえ感じていた。
人間の住む世界から離れていたのはたった一か月間だけだったのだが、彼にとってひどく久しぶりに感じられた。
厳しい自然界とは異なり、街中では気を緩めていても命の危険がほとんどないことに、ルロイは改めて驚く。
だが彼はいまだに修行中の感覚が抜けず、必要以上に神経を尖らせて通りを歩いた。
ルロイは、道行く女たちに目をやり、修行の「成果」を確かめようとした。
五月の爽やかな日差しの下、女性たちの胸元は空気に晒されていた。
ほんのり汗ばんだ健康的な若々しい肌は、世の男たちを虜にする力があるが、ルロイは彼女達の体に打ち負かされなかった。
彼は欲望のその先にいたのだ。
ありふれた美しさ、快楽のための肉体に溺れる程、彼の精神は柔でなかった。
ルロイは己の欲望に打ち勝ったことを確信し、会心の笑みを浮かべていた。
しかし、そんなルロイの禁欲を打ち破る魔物が、彼のすぐそばに迫っていた。
ルロイは自宅に戻ると、アパルトマンの大宅から手紙を受け取った。
「軍の方が見えていたよ。ルロイ君が留守だから預かっておいたんだ」
彼は特に何も考えず、封を切って手紙を読んだ。
彼の目には、「昇格」の文字が飛び込んできた彼は急いで軍服を身にまとい、軍本部まで飛んで行った。
欲望を抱くことを自ら禁じたルロイにとって、出世欲だけが唯一許された欲であった。嬉しくないはずはない。
ルロイは、襟を正してボーモン大佐に挨拶をした。
「お手数をおかけして、申し訳ございません」
ルロイが頭を下げると、ボーモン大佐は笑顔を浮かべた。
「いやいや、私こそ休暇中に済まなかった。どうだい、体を休めることができたかい」
「はい、お蔭様で」
ルロイがそう言うと、ボーモン大佐は咳払いをし、本題を切り出した。
「君は今日から中尉だ。これが階級章だ、つけたまえ。君はこれから私の部下になるのだ。その覚悟はできているか」
ボーモン大佐はルロイの目を鋭く覗き込む。
短く刈り込んだ金髪の髪、冷たく光る緑の眼を持つボーモン大佐は、軍内部きっての切れ者であった。
彼の放つオーラには、ナイフのような殺気が満ちている。
ルロイはビシビシと伝わるボーモン大佐のオーラに気圧されるどころか、迫り来る空気にむしろ快感さえ感じていた。