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甘く、深く、繋がって
第8章 刻む印
仕事を終えた斎藤さんに連れられてお店を出た。
スイッと右手を絡めとられ、駅に向かって歩き出す。
「ぁ、あの……斎藤さん」
思い切って声を掛けた。
「んー?」
歩みは止めず、優しい笑みで見下ろす斎藤さん。
「ご、ごめんなさい」
「……何が?」
ゆったりとした口調で、スゥッと細められた瞳。

あぁ、怒ってる。

再認識して泣きたくなった。
「さ、斎藤さん以外の人と、食事に行ったりして……あのお店は……斎藤さんの、なのに」
情けなくて段々声が小さくなった。
「うーん……まぁ正直嫌だよね」
眉を下げて笑って、ギュッと手を握られる。
「真純が他の男と二人なのも、それが俺の店って事も、ついでに目の前でキスされるのも」
最後の言葉が心に刺さった。
血の気が引いてクラクラする。

やっぱり、見られてた……

「ごめんなさい」
謝るしか出来なくて頭を下げた。
「もうしない?」
「しません」

したくない。

「んー……ねぇ、今日うちに泊まって?」
「……ぇ?」
驚いて見上げると、一見柔らかな微笑みを浮かべた斎藤さんが私を見下ろしていた。
「真純が俺のだって確認したい」
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