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五十嵐さくらの憂鬱。
第9章 …9
光輝の一件が幕を閉じてから
早くも一週間たった。
相変わらず樹は優しいし
言うことはない。
それなのに
さくらのため息は続いていた。

「……はぁ……ごっ!」

背中をどかんと叩かれて
さくらは息を吐き散らす。

「は、はるちゃん…いい加減その登場の仕方は…」
「よ、さくら!
まーたいつも通り、浮かない顔しちゃって!」

小春はいつもながら陽気に隣に腰を下ろすと
携帯を取り出していじり、
一息ついてさくらに向き直る。

「で?
DV彼氏と別れたのに、なんちゅー顔してんのよ」

別れたいきさつを話したところ
小春は光輝に憤慨も猛々しく、
怒りまくって
「別れて正解よ!」
とわめき散らしたのはつい最近。

樹が助けてくれて
今は樹とつきあっていることを
みんなには公にしないでおく条件で話したのも
同じタイミングだ。

公にするにしては、
相手が悪目立ちしすぎる。
派手な取り巻きと
目を引く存在感。
後で知ったが、憧れる女子も多いらしい。
さくらは、樹とは正反対だ。

「稲田先輩と、まさか、うまく行ってないとかじゃないわよね…?」

小声で小春が耳打ちし
さくらはそれに首を横に振った。

ーーー言えないーーー

直感的に、そう思う。
だが、小春はさくらより1枚も2枚も上手だ。

「……えっちが気持ちよすぎるとか?」

小春のつぶやきに、さくらは耳まで真っ赤になって
小春の正解を告げた。

「ビンゴか!
なんだ、ならいいじゃないの!」

大阪のおばさんのように
小春はさくらをバシバシと叩きながら笑う。

「でもはるちゃん……」
「なに?」
「このままじゃ私、どうにかなっちゃうんじゃないかって…」

一週間、樹がさくらを求めない日はなかった。
そのたびにさくらは乱れ
今までに味わったことのない快感を次々と樹から与えられる。

「さくら、それ、世の中ではなんて言うか知ってる?」

きょとんと小春を見ると
小春に左右のほっぺたをむっちりつままれる。

「の、ろ、け!のろけっていうのよあんた!
まったく、あいっかわらず幸せな頭なんだから!」
「いひゃいよ、はるひゃん、はらして…!」

痛いよ、はるちゃん、離して、が
つままれたせいで上手く言えない。
これでもかというほどさくらの頬をつねってから
小春は解放した。
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