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五十嵐さくらの憂鬱。
第12章 …12
「…こんなに、シーツびしょびしょにして…
どうしてくれるの?」

しおをふく、と言うのを覚えたさくらの身体は優秀で
樹の細やかで激しい指づかいに
シーツをたっぷりと汚した。

樹もさくらが感じているのを見るのが楽しいのか
嫌がって鳴く声がいいのか
さくらの腰が痙攣して動かなくなるまで
しおをふかせた。

おかげでセミダブルのベッドの半分が使えず
2人は隅に寄ってくっつきあう。

2人とも疲れきっていたが
満足感と幸福感に満たされていた。

「…今日、泊まってもいいですか?」
「当たり前だろ、今日は帰さない」

辺りが薄暗くなるまで
2人は抱き合いながらうたた寝をした。

樹が目を覚ました時
さくらがキッチンで何かを作っていた。
起き上がって寄ると、いい匂いがする。

「あ、起きたんですか…ふ、服をきてください…っ!」

さくらは笑顔を反転させて
樹から目と身体を逸らす。
素っ裸で現れた樹の
寝起きで起きたそれがやたらと目立っていて
恥ずかしさと視線をどこにもっていけばいいのかがわからず
さくらは無駄にあたふたした。

それを面白がってか
天然かわからないが
樹はさくらに後ろから抱きつくと
耳を舐める。

「ひゃ…っ!」

さくらは飛び上がった。

「ちょ、やめてください…もぅっ!」
「これ、なに?」

フライパンの上で
美味しそうな匂いをさせている料理に
樹は思わず鼻を近づけた。

「焼きうどんです…すみません、冷蔵庫の中、勝手に漁りました」
「いや、いいんだ…うまそうだな。
そういえば腹減ったな」
「ちょっと早いけどご飯にしませんか?」

さくらの申し出に樹は微笑んだ。

服を着ている間に
さくらはテキパキと準備をして
素早くテーブルに料理が載せられる。

「やばい、うまそう…」
「美味しいといいな」

ごま油で炒めたそれは香ばしい匂いを放つ。
キムチと残っていた豚肉とネギが入り
見た目も鮮やかに美しい。
さらに、温泉卵とかつお節が乗っかっていて
湯気でかつお節が揺らめくのが
またもや食欲をそそった。

2人でいただきますと言って
食べ始めた。
温かいスープは梅味で
あっさりしているのにコクがある。

ーーー幸せかもしれないーーー

美味しい料理に可愛い彼女。
なにも言うことはない。
樹は美味しすぎて言葉を失った焼きうどんを
ペロリと平らげながらそう思った。
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