この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
五十嵐さくらの憂鬱。
第2章 …2
優しく手を引かれて、10分ほど歩いただろうか。
ここだよ、という声に顔をあげれば
ランプ型の玄関灯が可愛らしい
アンティークな雰囲気のお店の前に立っていた。

大学の近くにこのようなお店があるとは
ちっとも知らなかった。

「段差があるよ。気をつけて」

エスコートされて店内に入れば
ちりん、という鈴の音がした。

カウンターから、いかにも、といった雰囲気のマスターが
ニコリと笑いかけてきた。
コーヒーの香りが店内に満ちていて
オレンジ色のランプが柔らかな店内だ。

「マスター、奥ね。
俺いつものと、彼女にはあったかいココア」

樹が指をさし、マスターはうなづく。
さくらはマスターにおじぎをすると
ブラウンを基調とした
オシャレで重厚な雰囲気の店内を抜け
観葉植物が盛大に置かれている
テーブル席の1番端に座った。

「わ、」

どうぞ、と言われて座った2人がけのソファが
高級なホテルかと思うほどの柔らかさでさくらを包み込んだ。

すっぽりと収まると
心地よく幸せな気持ちになってきた。

「気に入った?」

そのさくらを見て、樹は子猫を見るように
優しく微笑んだ。

「すごい、ふかふか!」

泣いていたのが嘘みたいに
さくらから笑顔が漏れた。
ソファを堪能していると
マスターが静かに飲み物を運んできた。

さくらの前に、湯気を立てたカップが置かれる。
見れば、ココアなのに、白くモコモコしていた。

「あったかいうちに飲みなよ」

樹も自分の前に置かれたカップに口をつけている。
さくらも、恐るおそるカップに口をつけて
「…おいしい…」とつぶやいた。

甘く、口の中にほわんと広がる香りがたまらない。

「…これ、マシュマロ?」

ココアの上に溶けかかったマシュマロと生クリーム
その上にチョコシロップがかけられ
シナモンがほんの色がつく程度、上品に乗っていた。

とろける美味しさに
さくらはようやくこわばっていた身体がほぐれた。

「落ち着いた?」
「はい。あのー…ありがとうございました」

おじぎをして下を向いた瞬間、
さっきの光景が目に浮かんで
瞬時に涙が目の淵に溜まった。

顔が上げられずにいると、横に人が座る気配がした。

「怖かったよね。もう、大丈夫だから」

さくらは手で顔を覆い、
そのまま泣き崩れた。

その頭を、樹は優しく撫でた。


/249ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ