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五十嵐さくらの憂鬱。
第14章 …14
「樹。やけに嬉しそうだな」

開口一番、そんなことに気づかなそうな人物トップ5に入りかねない修が
樹を見るなりそうこぼした。

「いや…別に」
「…もう少しまともな言い方しろよ」

樹はそこでやっと修を見つめた。
メガネ越しの彼の視線とばっちり合う。

「…彼女か?」
「まぁ、そんなとこ」
「隠すなよ」

文学青年は、本を持ったまま首を傾げた。
うるさい夏月がいないうちに
そのニヤニヤ感を収めろとでも言いたそうな顔だった。

「俺のためなら、なんでもやりそうでさ」

ポツリと樹がつぶやく。

「彼女が、か?」

うなづく樹が少し照れくさそうにして
修は驚いた。

「樹がのろけるなんて、珍しいを通り越して珍事で怪奇現象の類にはいるな」
「失礼にもほどがあるだろ」
「相当好きなんだな…」

樹はうなづかないが
その空気感で修は分かる。
樹の視線がふと一点に集中して
そちらを見ると、小春とさくらがいた。

小春が修を見て手を振る。
修はそれに会釈で返す。
さくらは恥ずかしそうに樹を見て
ほんの少し会釈をした。
樹の柔らかな表情を見て
修は自分の何かが動き出す音が聞こえた気がした。

「…そういや修、小春ちゃんとはどうなんだよ?」
「どうもこうもないよ」
「また、そういう感じかよ。少しは興味もてよ」
「…そうだな」

修の肯定の言葉に樹が逆に驚いた。

「…そんな顔するなよ。俺もそろそろ、恋愛とか異性とかに興味を持つべきなんだろうなと思っただけだよ」
「熱、ないよな?」
「失礼にもほどがあるだろ」

2人でくすくす笑いながら
穏やかに日が過ぎてゆく。


それから、2週間後だった。
修が、1人で図書館にいる五十嵐さくらを見つけたのは。
二層書庫と呼ばれる
紙の匂いが染み付いた
本をより多く置いておくためだけの
天井の低い書庫。

そこで、なにやら物憂げに本を眺めるさくらを見つけた。
普段、自分から女子に声をかけるということは滅多にない。
だが、五十嵐さくらに関しては気になった。
樹が、あれほどまでに思いいれる女の子。
樹の恋愛遍歴を知る修だからこそ
余計に興味が湧いた。

「何か探している?」

修に気づかなかったのか
さくらは肩を震わせて振り返る。
驚きすぎて声が出せずに固まっていた。

「あ、と…」
「?」

さくらの眉間にシワがよる。
修には苦しそうに見えた。
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