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五十嵐さくらの憂鬱。
第15章 …15
修から呼び出しが来たのは、
樹との情事を見られてから
約2週間後。
その間にも、再三に渡り
校内での内緒の行為を見られていた。

修が見ている。
それが頭の端っこにあって、
最近では気もそぞろだった頃。

図書室の個別自習室に呼び出されて
恐る恐るさくらが入ると
銅像のように本を読む修がいた。
パタンと本を閉じた動作で
やっと生きていると確認ができる。

「…何してるの、戸を閉めて」

言われて、修に見とれていて
開けっ放しだったことに気づいた。
慌てて閉めて、改めて修を見ると
先ほどと何ら変わりのない姿があった。

眼鏡の奥から見てくる瞳に
感情を読み取ることは難しい。

「…たくさん、見させてもらったよ」

空気をわずかに震えさせるような声。
それでも耳に心地よく届く。
先生みたいな話し方。

「…まったく、校内でなんていう淫らなことをしてるんだ」

さくらは耳まで赤くなるのを感じた。
こっちにおいで。
そう言うと修は立ち上がり
扉に鍵をかけた。

「え…あの…」
「君に拒否権があるとでも思ってるの?」

できれば密室は避けたかったのだが
やんわりと、しかし有無を言わせない修の声に
さくらは喉まででかかった声を戻した。

「あるわけないよね。こんなの、学校にばらまかれたくなかったら」

そう言って取り出した修の携帯の画面には
樹に襲われて上気したさくらのとんでもない写真があった。

「なっ…! やめてください!」

あまりのことに修の持った携帯に飛びかかると
それをひょいと上に持ち上げられてしまう。
勢い余って修の胸に自ら飛び込む形になってしまった。

「ばかだな、自分から飛び込んで来るなんて」

修はさくらを掴むと、ぐいと後ろに押しやる。
さくらはそのまま、自習机まで押さえ込まれた。

「こんなのもある」

修は相変わらず無表情にさくらを上から見つめる。
携帯には、別の日のさくらが写されていた。

「これは、講堂の横。こっちは3号教室」

次々と写真がかわり、さくらは穴があったらすぐさま入ってしまいたい気分だった。

「こんなのもある。この、近く」

そう言って出した画像は、図書室で後ろから犯される写真。

「……な…んで、こんな…」

修はやっと、口元に笑みを乗せた。
ただ、それはさくらが見た中で、
最も残酷さを秘めた笑顔だった。

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