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五十嵐さくらの憂鬱。
第15章 …15
修は図書室にあの2人を置いていくと
その後の2人が想像できて
微笑ましい気持ちになった。

樹が本気になるのはいいことだ。
しかも、
今までの悪運から脱出できたと言っても良いくらいの彼女だった。

ーーー裏切ることはないだろうけどーーー

樹への想いが強く
それだけに、心配な部分がなきにしもあらずだが。

ーーーま、そこは樹が上手くやるだろーーー

修は歩きながら、さくらの痴態が撮れたフォルダを消去した。
2週間弱、さんざん2人には楽しませてもらった。
さくらは従順で
樹の友達というだけで
いちいち報告するようにという修の言いつけさえ守った。

なので、2人の校内での行いを
さんざんみせびらかされたわけだが。

ーーー俺は…ーーー

「あ、先輩!」

その声に顔をを上げると
さくらの友人の小春が
嬉しそうに小さく手を振った。

「さくら見ませんでした?
遅刻した所のノート、写させてもらう約束だったんだけど
見当たらないし、電話も出なくって」

あー。
どうしようか、と修は思った。

ショートカットが似合うこの子は
もともと社交的なのか
知り合ってからというもの
顔を合わせれば懐っこく話しかけてくる。

だが、修にだけ
少ししどろもどろする。

その姿が、いじらしいと感じ始めている自分がいることに
薄々感づいていた。

「…あの、聞いてます?」

押し黙る修の顔を覗き込んで、
目が合うと、ちょっと目を見開いた。
その頬と耳がほんの少し赤くなる。

ーーー女子の反応なんか、気にする俺じゃなかったのにーーー

「聞こえてるよ。
居場所も知ってる」
「え!? どこにいるんですか!?」

こっち、と言って修は反対方向に進み始めた。
そうとは知らず
小春はちょこちょことついてくる。

さくらに比べればほんの少し背が低いが
世の中の女子としては普通だろう。
よく自分のことを分かっているようで
オシャレに隙はなく
爪先もきれいにしている。

そんなことを横目で観察している間も
ずっとなにやら話をしていた。

「…それで、私すっかり忘れてて遅れちゃった…んで…!」

修と目が合うと、
小春はしりすぼみになって言葉が口から消えて行った。

「…どうしたの?」
「いえ…」

修は小春の頭をぽんぽんと撫でた。
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