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第6章 修道女

少女は扉の前に立ったまま、じっと押し黙っている。

急にルイーズの胸に慈悲の情が沸き上がってきた。

もしかして、こんな夜更けにずぶ濡れになってさ迷っていたのだろうか。
だとしたら不憫すぎる。

この近くでも、裕福な商家がひとつ、悪魔に取り付かれて潰れたという噂が立っていた。
こんな場所で女子供の一人歩きは怖かっただろうに。

「どうしたのですか？　迷子にでもなったのですか？」

近づいてみると、ずいぶんと愛らしい顔をした少女だということがわかった。
天使画のモデルにされてもおかしくはないほどだ。

ただ、濡れた前髪の間から覗く茶色の目が、妙に暗かった。
以前、両親を目の前で殺された孤児がこんな顔をしていたのを見たことがある。
この少女も何か酷い目に遭ったのだろうか。