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片想いの行方
第13章 好きでいても、いいですか?
その後、10mほどの小さなプールの中で、あたしと陽菜ちゃん2人だけの水泳教室が始まった。

 
「いい? まずは深く深呼吸。
ゆっくりでいいから、自分のタイミングで大丈夫だと思ったら、大きく息を吸って、水の中に潜ってみて」


蓮くんは、穏やかな口調で続ける。


「怖がらなくていいんだよ。
焦る必要もない。
潜ったらゆっくりと目を開いて、プールの水が揺れるのを見てごらん」


蓮くんの言葉は、まるで何かの音色のように、あたしの心に優しく響いた。

心が落ち着くと、簡単に水の中に潜れる。

外からの光でゆらゆらときらめいて、あたしは初めて水が綺麗だと感じた。

途中から苦しくなって水面の外に出ると、浮かびあがった先に蓮くんの笑顔があるから

気付いたら、恐怖感は全く無くなっていた。



歩いたり、息継ぎの呼吸法を練習したり

けのびまで終わったところで、いよいよビート坂を使って泳ぐところまで来た。

陽菜ちゃんは、すっかりやる気になっていて、ビート板を持ちながらバシャバシャと足を動かしている。

さすが、飲み込みが早いなぁ。


「俺が端を持って先に引っ張るから、体の力を抜いて足を動かしてみて」


蓮くんは、ビート坂をあたしに渡した。


「うん……」

「大丈夫。絶対に離したりしないから。
体を水面に乗せるようなイメージで、怖いと思ったらすぐに立っていいよ」


蓮くんの言う通り、あたしは10mの短い間に何度も立ち止まった。

それでも蓮くんは、ゆっくりと進んでくれるから

あたしはなんとか体を前に進めようと、無我夢中で同じ動作を繰り返した。
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