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片想いの行方
第48章 2人の夜

* * *


「また泣いてるのかよ。泣き虫」


私の元に帰ってきたヒメは、いつもの表情と口調に戻っていた。


「……ずるいよ……天才なの?」


ハンカチで涙を拭う私を見て、ヒメは笑った。


「心外だな。
誰よりも真面目な努力家だ」


……よく言うよ。

そんな色気爆発の顔して、青春時代の応援歌を歌われた、こっちの身にもなってほしい。

ヒメは上機嫌で私の横に座る。


「驚いた?」

「……当たり前でしょ」

「俺の歌声に感動した?」

「…………」

「しなかったのかよ?」


ヒメがじっと私を見る。

………言わなくても、分かるくせに。


「……すごく、感動したよ」


心が震えて、人の歌声を聞いて涙が溢れたのは初めてだった。
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