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片想いの行方
第56章 恋する姫君
「恋する姫君(ヒメギミ)。
諦めちゃだめよ」
優香が笑い涙を浮かべて、俺の左手を握る。
「あなたのその10年越しの片思い。
明日彼女に聴かせてあげなさいよ。
心を込めて歌えば、きっと気持ちは伝わるわ」
「そうよ。
あんたはこの私の弟なんだから、やればできる!」
姉貴の両手が、俺の右手を乱暴に掴む。
「一世一代の愛の告白。
クリスマスの夜の奇跡を信じて。
一条の追放が序章なら
明日が決戦の日曜日よ!!」
「……………」
酔っ払いが言い放ったドン引きなセリフと
両手に伝わるウザいほどの熱。
それでも、この時の俺には
パワーを注入されたように、2人からの応援歌が心に響いていた。