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片想いの行方
第58章 忘れられない人

同じ大学で、元カノだと言った彼女は、ストレートの黒髪が似合う美人だった。


「で、何の用?」


明らかに不機嫌そうな声でアンナが聞くと、その人はベラベラと話しだした。


「有名だったんですよー。

ヒメが高校の時からずっと好きな人がいるって事。

本人が頑なに否定するけど、ヒメを好きな女の子は、みんな気になるからそれぞれで調べたりしてて。

だから、美和さんのことは結構みんな知ってます」


「…………っ」


「あたしも、別れてからもヒメの事を諦められない1人で。

だからこうして今日もこっそりここに来たんですけど。

まさか美和さん本人がいるなんて、超びっくり。

そして……今の2人の会話を聞いて、ずいぶん勝手な人だな~って驚いてます」


…………!

ドクっと心臓が鳴る。

今のアンナとの会話を聞かれてた……?


「盗み聞きなんて最低。
しかも、あんたには関係ないわ」


アンナのドスの効いた低い声に、その人は一瞬黙ったけど

私を睨みつけながら、再び口を開いた。


「……ヒメは、美和さん以外にも女がいますよ」


「…………!」


「あたり前じゃないですか。

誰かと両天秤にかけるなんて、そんな価値の低い男じゃないもの。

あんなイイ男が、美和さんだけに優しいと思ったら大間違いだから……」


「おい、お前ここで何してるんだ」


その時、私達の異変に気付いた店員のヤスさんが、階段の下からロフトに上がって来た。


「ここはプライベートエリアだから入れないぞ」

「…………」


ヤスさんの低い言葉に、その人は黙って私から目を逸らす。
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