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片想いの行方
第59章 弱さと痛み
色んな客に囲まれて対応していたから、気付いた時にはもう遅かった。
タイミングを見計らっていたであろうヤスに、どこか寂しげな表情で声をかけられて
螺旋階段を上がったその先には、既にもうアンナしかいなかった。
「………ごめん、ヒメ。
あんたの元カノは予想外だとしても、私が2人の話をするなんて間違ってたわ……」
美和が出ていくまでの経緯を俺に説明すると
アンナはゆっくりと頭を下げる。
「美和は……ヒメに心から感謝してる。
今回のことでいつかの恋心を思い出して、もう一度あんたに惹かれたのは確かなのよ」
顔を上げて夜景を見つめながら、アンナは静かに続けた。
「だけど
私達が思っているよりも、ずっと深い記憶が……
美和にしか知らない、蓮くんとのかけがえのない1年があるのよ。
きっとどこかで美化してるだろうし、思い出は綺麗なものだけど。
美和にとっては、大切に重ねた時間なんだわ」
「………………」
俺が黙ってその言葉を聞いていると
アンナはボトルを持って、俺のグラスにワインを注いだ。