この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
監禁DAYS
第3章 今だけ傍にいて

 雨が降る。
 ぽつぽつと。
 何かを洗い流そうとするみたいに勢いを増して。
 雨が降る。
 髪の毛を滑り落ちて、肌を伝い、流れてゆく。
 排水溝に溜まり、それではもの足りぬというように地面を這って、どこかを目指すように。
 雨が降る。
 雨とは、いったいどれを指すのだろう。
 どす黒い雲と、水滴?
 無限の滴?
 雲がない通り雨もあるじゃない?
 この足元を揺れる水は、どう。
 地下に堕ちれば、川に混ざればもうそれは雨じゃない。
 そう言い切っていいのかしら。
 ざあざあと。
 やみませぬなあ。
 雨宿りをした人々の穏やかな会話はきっと千年前から変わらない。
 雨が降る。
 ぼんやりと視界を霞めて、その奥の闇から記憶を連れてくる。
「あの通り魔、まだ捕まってないんだって」
 耳元でこそこそと、誰かが囁く。
「被害者は五人。全員若い女の人だったみたいよ」
「とんでもないわねえ」
「包丁で十何か所もめった刺し」
「遺族にしたらたまらないでしょうね」
「目撃者も沢山いたんじゃないの」
「雨の中、走ってレインコートの男が逃げて行ったんでしょう?」
「コートについた血が、雨で落ちて道に残ってたんですってね」
「でも、途切れてそこから行方もわからなくなったのよ」
「警察は何をしているのかしら」
 コンクリートにぽつぽつと。
 赤い滴が垂れませう。
 裸足で踏みつけ擦ってみたら、無様に黒く染まってしまう。
 事件現場の黄色いテープ。
 救急車のけたたましいサイレン。
 鑑識の黒い制服。
 あれは紺色だったかしら。
 全部が濡れて、黒に変わっていたからわからないけれど。
 お母さん、貴方の娘も真っ黒に。
 でも、違った。
 残酷な程に白い肌と、赤い液体は鮮やかで。
 見せつけるみたいに。
 記憶に深く深く残像を刻んで。
 美香。
 美香、美香。
 返事して。
 母の絶叫が響き渡る。
 ふらふらと足が後退し、野次馬どもの中に埋もれていく。
 どいて、どいて。
 どこに向かいたいかもわからないけれど。
 美香。
 綺麗な顔が、見えないほどに。
 ねえ、どうして。
 どうして顔を刺せるの。
 横に転がっていた白い小さな球体は?
 雨に濡れて光って。
 おぞましく。
 真っ白な骨も。
 そぎ落とされた肉片も。
 雨の中。
 洗われて。
 視界を曖昧に、夢みたいに。
 雨が降る。
/61ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ