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オルテンシア【紫陽花】~檻の中の花嫁~
第5章 ☆♯03 SceneⅢ(SeaSide~海辺にて~)☆
その漆黒の瞳は哀しみを湛えている。すべてを諦めたような口調には深い落胆が滲んでいた。だから、美月は、迂闊にも気付かなかったのだ。いつしか男が自分を〝君〟と呼ばず、〝美月〟といかにも馴れ馴れしげに呼び捨てていることに。
幾ら何でも、常識から考えれば、想いを寄せる女性をデートに誘うのに失敗して意気消沈しているはずの男がこんな風に急に親しげに〝美月〟と名を呼び始めるはずもないのに―。
幾ら何でも、常識から考えれば、想いを寄せる女性をデートに誘うのに失敗して意気消沈しているはずの男がこんな風に急に親しげに〝美月〟と名を呼び始めるはずもないのに―。