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朏の断片
第3章 #2

「あんま遅なったらアレやし、送ってく?」
実際はどうあれ傍目には上田は女子高生だ。夜道の一人歩きはさせられない。
「いやいい。病院寄って帰るから」
「じゃあ病院まで俺も――」
「いい!ミキには近付くな!」
過剰な防御攻撃に地味に傷付く。確かにいきなりキスするような男は危険人物と認定されても仕方ないのだが。
「俺が好きなんはマサキだけやって……」
ぶちぶちと片桐が呟くのを、上田は尖った目を弛めてじっと見た。
「変な奴」
他に言いようがないのか、だが特に悪意を込めた声でもなく透明な響きだった。
「家、どこ?」
「俺の?すぐ近くやで。歩きでも行けるんちゃう?」
「……へー」
上田の気の抜けたへーが何を意味してるか、片桐は首を傾げた。
「家来る?」
てっきりまた罵倒されると思いながら、だから冗談半分だった。

