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《番犬》が女に戻るとき...
第2章 宝物
「いただきます」
あぐらをかいて座った脚の上に弁当を置いて、茜はスイッチが切り替わったようにもくもくと食べ始めた。
「……」
ときどき箸をやすめて牛乳をごくごく喉に流し込む隣の茜を眺めながら、梗子はゆっくり箸を動かした。
「…羨ましいなぁ」
「──?」
梗子がそんなことを呟くので、茜は口の中のものを呑み込み問いかけた。
「何が?」
「…だって、そんなにご飯食べてるのに太らないでしょう?茜ちゃんは…。わたしなんか、沢山食べたらすぐ顔が膨れちゃうから我慢してるのにっ」
「…そ…それは…」
「わたしもお肉お腹いっぱい食べたいわ。…ね、茜ちゃんみたいに運動すればいいのかしら。例えばそうね…ジムとかに通えばいいのかしら」
「花崎さんは生徒会の仕事で忙しいじゃないか」
「そう…だけどさ」
梗子はハァーと溜め息をついた。
そして彼女の表情が少しだけ曇り
屋上の柵越しに見える遠くの山に目を向けて話し出した。
「──でもね、何か習い事をするつもりなんだ」
「…?」
「…だって…このまま弱いままなんて、やっぱり駄目だと思うから」
「…花崎さんは弱くない。それに、そんなことしなくても大丈夫」
「……」
「…私が守るから」
とことんクサイこの台詞…
茜は全く照れることなく言ってのけた。