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《番犬》が女に戻るとき...
第29章 ハダカの心
「俺が男の夢を壊した…」
「篠田…!」
「あの時、包丁をよけていれば」
殺さずにすんだ、殺されずにすんだ。
「俺が殺したんだよ」
「──…違う、殺したのは篠田じゃない…っ」
淡々と語る零からは、表面上はいつもと変わらぬようでいて、しかし内に迫るものを感じた。
彼の眉間に僅かにシワがよる。
その表情は苦しそうだ。
「俺なんだ」
「それは違う!」
だから、それを聞く茜も必死だった。
零が初めて人に見せた胸の内──ハダカの心に抱えた痛みを、その声を聞いた彼女も同じように辛かったから。
抱えた痛みを隠して余裕をふるまってきた零。
彼はそうやって、人と深く関わるのを避けてきた。
何故なら彼は臆病者だから。
自分に関わることで他の誰かが傷付く……。
零は臆病にならざるを得なかったから。