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激愛~彼の瞳に射貫かれて~
第15章 第四話【花笑み】 《其の壱》
 美空は、それには応えず、黙って庭の桜を見つめた。正直言えば、先刻の言葉以上、応えようがないというのが本音である。
 良人家俊が第八代将軍となってまだ漸く一年、新しい治世の基盤はいまだ十分固まっているとは言い難い。初代東照公家康がこの江戸に幕府を開いて以来、百年が経過した現在、天下泰平の世が続き、人心が安定しているのは良いが、その反面、江戸の町にも怠惰で退廃的な気風が蔓延している。あまりにも平和な時代が続きすぎ、人々がその平和に飽き、倦み始めた。
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