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第15章 第四話【花笑み】　《其の壱》

何しろ、幕府あっての将軍、公方さまおわされてのこの大奥じゃ。今は幕府の屋台骨がいささかなりとも揺らぐことのなきよう、我等も心を一つにして事に当たらねばならぬ。そなたの言い分は聞いた。私とて同じ女子、一生奉公の覚悟で大奥勤めに励む者たちの心も満更理解できぬわけではない。さりとて、今すぐにどうしてやるということも私にはできぬ。今しばらく待って欲しい」
　美空が諄々と説いてゆくと、永瀬はハッとその場に平伏した。