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激愛~彼の瞳に射貫かれて~
第5章 《其の四》
頑固者で融通のきかぬ松兵衛に、女房は愛想を尽かし、三つと一つになる二人の娘を置いて家を出ていった。そんな松兵衛であってみれば、女房である娘に働かせて自分は遊び暮らしている娘婿は許しがたい存在なのだろう。松兵衛の娘は、近くの一膳飯屋に通いで女中として働きに出ており、亭主との間には三人の子がいた。
周囲からは頑固だ無愛想だと何かと悪く言われることの多い松兵衛だけれど、その皺深い細い眼は数々の出来事をつぶさに見てきたのだろう。