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激愛~彼の瞳に射貫かれて~
第5章 《其の四》
 が、今のところ、孝太郎は何もなかったかのような顔で朝になれば荷を背負って行商に出かけている。正直言って、美空は良人が何を考えているか判らない。いつもどおりの穏やかな、ありふれた時間が流れていれば、あの出来事―自分の惚れた男が実は尾張藩主だったなぞという話はそれこそ冗談であったとしか思えない。
 いや、本当にあの二日前の早朝のやりとりが悪い夢であれば、荒唐無稽なお伽話であったらと思わずにはいられない。
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