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激愛~彼の瞳に射貫かれて~
第2章 《其の壱》
 美空は今年、十六になる。ふた親はとうに亡くなり、現在は江戸の町外れにある徳(とく)平(べい)店(だな)に一人住まいだ。徳平というのは数年前に亡くなった長屋の持ち主―つまり大家の名である。温厚篤実な老人で長屋中の連中から慕われていた。その名を惜しんで、いまだにこの貧相な棟割り長屋は〝徳平店〟と呼ばれているのだ。
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