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激愛~彼の瞳に射貫かれて~
第5章 《其の四》
 その清楚でどこか神秘的な香りは、何とはなしに雪を連想させる。もちろん、雪には香りなどないのだが、その香りの爽やかさと水仙の花びらの穢れなき白が雪の印象と繋がるのかもしれない。
 そういえば、随明寺の絵馬堂前で孝太郎に貰った櫛にも水仙の花が描かれていた。
 思えば、あの櫛が二人の縁(えにし)を結び合わせのだともいえる。尾張藩邸に迎えられるに当たり、何も持参する必要はないと孝太郎からも言われたけれど、あの蒔絵の櫛だけは数少ない手荷物の中にそっと忍び込ませている。
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