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激愛~彼の瞳に射貫かれて~
第9章 【烏瓜~からすうり~】 《其の参》
しばらく美空から応えはなかった。
実をいえば、美空は知らぬことではあるが、宥松院が孝俊の側女にと考えているお葉は、ふた月前、美空が廊下で奥女中の一団を引き連れた唐橋とすれ違った際、その一団の中にいた娘であった。あの時、美空の打掛の裾を掴んで転ばせようとした不届きな女の傍らにいた、あの娘である。周りの朋輩が平伏している中、お葉だけが背筋を伸ばし、心もち顎を持ち上げ美空を真っすぐに見上げていた。その様は、お葉という娘の傲慢さを表しているかのようでもある。
実をいえば、美空は知らぬことではあるが、宥松院が孝俊の側女にと考えているお葉は、ふた月前、美空が廊下で奥女中の一団を引き連れた唐橋とすれ違った際、その一団の中にいた娘であった。あの時、美空の打掛の裾を掴んで転ばせようとした不届きな女の傍らにいた、あの娘である。周りの朋輩が平伏している中、お葉だけが背筋を伸ばし、心もち顎を持ち上げ美空を真っすぐに見上げていた。その様は、お葉という娘の傲慢さを表しているかのようでもある。