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激愛~彼の瞳に射貫かれて~
第2章 《其の壱》
いや、この徳平店に暮らす住人は皆、似たり寄ったりの事情を抱えている。他人(ひと)にはけして話せぬ昔、知られたくないしがらみを抱え、それでもなお、その日その日を暮らしてゆかねばならない。そんな境遇では互いに労り合いつつも、けして他人の過去は詮索しない―というのが暗黙の掟のようなものとして存在している。
美空は、この徳平店で生まれ育った。市井の底で暮らす庶民のしたたかさ、悲哀、そして労り合う優しさをその身をもって知り尽くしている。