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激愛~彼の瞳に射貫かれて~
第12章 【細氷~さいひょう~】《其の壱》
海千山千の老中を〝頭の固い爺ィ〟と口汚く罵ってはいても、孝俊が面と向かって阿倍誓頼に刃向かえなかったのは致し方ない。その孝俊の苦渋は美空にもよく理解できる。
孝俊が御三家の当主、尾張藩主であるがゆえに、かえって老中の総意を撥ねつけることはできないのだ。この話を断れば、尾張藩と幕府との間に埋めがたい亀裂が入ることは必定だ。たとえ御三家筆頭尾張家とはいえ、将軍家、ひいては幕府に仇なす気持ちあり、つまり逆心ありと取られる怖れさえある。
孝俊が御三家の当主、尾張藩主であるがゆえに、かえって老中の総意を撥ねつけることはできないのだ。この話を断れば、尾張藩と幕府との間に埋めがたい亀裂が入ることは必定だ。たとえ御三家筆頭尾張家とはいえ、将軍家、ひいては幕府に仇なす気持ちあり、つまり逆心ありと取られる怖れさえある。