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せめて夢の中だけでも
第29章 宣戦布告
「おい。あいつ、様子おかしいだろ」
「………」
何も答えない私に隼人は次第にイラつき出す。
「おい!なにがあったんだよ!?」
「…何もないの。私の勝手なマイナス思考。」
「なんだよっ。それ。」
「本当なのよ。朱里さんって人と何かあったわけじゃない!
ただ、煌君が私を不安にさせただけ!
本当にそれだけなの!」
「なら、何で!あいつがあんなに動揺してんだよ!」
「えっ…」
「あいつは何かを隠してる。
ったく…何やってんだよ」
心臓が何度も何度も…脈を打つ。
ドクッードクッーっと痛いくらいに。
しばらくして…私は隼人から離れて
仁さんへと電話した。
『凛ちゃん?どうした?』
「あの…」
『秋なら一緒だよ。どうした?』
「え…一緒…」
私は本当にホッとした。
二人きりじゃないことに安心した。
電話の向こうの仁さんは全てお見通しのように
私へと話しかけた。
『大丈夫だよ。今日はちゃんと送り届ける。
だから、そこで待ってな。』
心の奥底に届くような優しい声。
私の目尻からは涙が滲んでいたが
それを拭き取ると、仁さんに
「はいっ…」と返事をした。