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私達が人間を辞めた日【外伝】 寿~孤独な支配者~
第1章 プロローグ~茜色の約束~

母親は少年の嗚咽が治まると、優しい声音で言う。

「優真は悪くないって...お母さんは信じるよ。でもね?人を叩いたり...痛い思いをさせたりするのは駄目...」

少年がその言葉の意味を問うように母親を見上げると、母親は穏やかに少年の頭を撫でながら続ける。

「叩かれたら体が痛かったでしょう?それに...叩いたら優真の心が痛かったよね?」

少年は涙を滲ませながらコクコクと頷いた。

「優真には誰よりも優しい人になって欲しいの」
「優しい...人...?」
「そう...優しい人。優真が皆に優しくできたら...それを見てくれている神様がね?優真を幸せにしてくれるし、優真が優しくした人だって幸せになるの」
「じゃあ、僕お母さんに優しくするっ」

母親は少年の言葉に少し照れたような笑みを見せると、しゃがんで少年と目線の高さを合わせ、小指を立てた手を差し出す。

「優真はもう十分優しい子だったね。これからも優しい人でいてくれるように、約束しよっか?」
「うん!!僕もお母さんみたいに優しい人になる」

少年と母親が絡めた小指を...夕焼けが包むように照らした。
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