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第25章 花梨、狼と戦う

突然、ぎゅうっと抱きしめられた。

力強い、男の人の腕。
すっぽりと閉じ込められたあたしは、佐和紀の匂いにくらくらする。

「一回しか言わないからよく聞いとけ」

そう言うと、佐和紀は少しだけ息を吸う。

次の瞬間、耳元で囁く低い声。

「好きだ、花梨。愛してる」

「……っ！」

声にならない声があたしの喉を震わせた。
心臓が暴れ出して、もはやどう押さえ付けたらいいのかわからない。

佐和紀の顔を覗き込もうとしたけど、さらに力強く抱きしめられてしまった。
息が出来ない。

佐和紀の心臓の音が聞こえる。
あたしに負けないくらい、速く刻むビート。

こいつも緊張してる？
あたしと同じように、ドキドキしてくれてるの？