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第1章 何で私が？

その時店の電話が鳴った

「はい、ゲイバーさとし　です♪」

ママが野太い甘えた声で電話に出る。

ゲイバーさとしって、表なんだか裏なんだかわからない名前だよねぇ。
なんて、思って聞いていたら

「ちょっと！ビビアン困るわよ！

　今から常連さんが
　大事なお客様連れて来てくれるのよ！

　いくら風邪って言っても
　あんたの野太い声なんて
　普段も今も変わんないじゃない！

　‥‥え、え、っちょっとぉ！」


ため息混じりに受話器を置くママ

「ビビアンどうしたの？」


ビビアンはここの売れっ子ニューハーフ。
ビビアン目当てのお客さんも多い。

「困ったわぁ

　ビビアン風邪で熱だして
　今日出てこれないんだって。

　あと一時間で大勢さんいらっしゃるのに
　今からじゃ手配つかないわよ‥‥」


ため息をつくママの視線が私の視線を捕らえた。


‥‥背筋に何か寒いものが‥‥‥