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暁闇
第7章 記憶の中の雨
「当時住んでたところから、母の実家までは車で2時間。
父は、通勤に時間がかかりすぎるということで、そこに残ったの。
そして、母と私と、当時小1だった丈の3人で引っ越して、母方のおばあちゃんの家で暮らし始めた」
「そうだったんだ……」
「おばあちゃんたちも優しかったし、そこでは普通に楽しく毎日過ごせたんだけどね……反対に両親の仲がうまくいかなくなっちゃって」
「え」
「ひとりで暮らしてた父が女の人作っちゃったりとか。そういうの、あって。
……で、私が高2のときに、離婚したの」
「……だから、丈のこと」
「そう。私のことがなかったら、きっと離婚になんてならなかったでしょう?
丈は男の子だし、父親の存在って大きいものだと思うの。でもそれ、私が奪っちゃったから。
……せめて私でできることは何でもしてあげたいの」
「あおいさん――――」
「だからね、高校は私のアパートから通いたいって丈が言ってくれたとき、世話をいっぱいやいてあげられる! って内心嬉しかった。
……あ、丈には内緒ね?」
そう言って、いつものように、ふふ、と笑う。