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暁闇
第2章 花冠の……
大学4年の3月――――。
「村上! こっち!」
その会場の最寄り駅。
待ち合わせしていた坂本が俺に気付き、手を振ってくる。
「よかった! ちゃんと来てくれて」
「……ドタキャンなんてしねーし」
ぼそっ、と呟いた俺に、坂本は笑って頷いて。
「ん! じゃあ行こ!」
そう、俺を促すように歩き始める。
他愛もない話をしながら向かった先は、桜井と、葉月先輩の結婚披露パーティーの会場だった。
式は身内だけでこじんまりと済ませたらしく、今日は友人たちに報告や挨拶をするために企画されたもので。
隣を歩いている坂本は、桜井の親友。
高校で親しくなった俺たち三人は、大学も一緒で。
俺がずっと桜井を好きだったこと。俺と、桜井が少しの間付き合っていたこと。もちろん全部知られている。
……それは付き合ったというより、付き合ってもらったという方が近いそれだったけど。