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暁闇
第9章 その予感は
「桜井のときは……丈みたいにやっぱり思ってたかもな」
呟きながら、思う。
可愛いし、優しいし、なんかあの子っていいよな――――それから、始まったはずだ。
そしてその感情は、何の躊躇いもなく『好き』へと変わっていった気がする。
今思えば、きっとそれは本当に単純に。
「……丈の言う通りかもな」
大人になって。
なんだかいろいろなことを考えてしまうようになった。
……いや。
大人になっても、思うままに行動できる人もきっと、いる。
なら、俺がただ、そうなっただけなのかも知れない。
「俺って、意外と面倒くさい奴だったのかな」
こぼしたその言葉に、俺は自嘲気味に笑うしかなかった。
けれど、そんな中でもひとつだけ分かっているのは。
桜井のことを以前のように頻繁に思い出さなくなったのは、きっとあおいさんのことをよく考えるようになっているからだ、ということだった――――。