この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
暁闇
第11章 始める決意
「…………っ!」
それまで静かだった感情が、途端に動いた。
男に向けられたあおいさんの笑顔。
バッグを手にとると、何かプレゼントのような物を取り出して、男に手渡した。
礼を言うように、小さくお辞儀をするその男。
また、あおいさんはにっこりと微笑んで――――。
……誰だ、あいつ。
胸がざわめく。
俺の誘いを断ったのは、この男に会うためだったのか、と。
「……村上くん?」
立ち止まって店の中を見たままの俺に、氏井さんが声を掛けてきた。
「あ……ごめん」
はっ、と我に返る。
そうだった。俺は今、彼女と一緒だった。
「ここのお店?」
何も知らない彼女はそんなふうに言って。
でも俺は、中に入る気にはとてもなれなくて。
頭の中があおいさんとその男のことでいっぱいで。
ぐるぐると、いろんな感情が渦巻いていた。