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暁闇
第11章 始める決意
「……ごめん」
俺の口から出る言葉は、それ以外なかった。
「今、俺……好きな人のことで頭がいっぱいで。他の人のこと、考えられないんだ」
「……少し、も?」
頷いて答える。
氏井さんはしばらく無言で。
でもやがて、わかった、と呟いた。
「ごめんね、突然」
「……俺こそ、ごめん」
その言葉に首を振った彼女は
「……実は、小林くんには、私から頼んだの。機会作ってほしいって。
騙すみたいにして呼び出して、ほんとごめんなさい」
そう言って頭を下げる。
「いいよ」
俺の言葉にも、まだ彼女は頭を下げたままで。
「……応えられなくて、ほんとごめん。
でも、気持ち、嬉しかった。ありがとう――――」
その言葉に、ようやくゆっくり顔を上げる。
口元に、無理して浮かべているのがわかるその笑み。
もう一度小さく頭を下げると、じゃあね、と言って彼女は去っていった。