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暁闇
第15章 私
「翔悟くん……」
スタンドの灯りがほんのりと闇を照らす暗い部屋。
ひとり、彼の名前をそっと口にした。
胸にこみ上げてくるのは、何の感情なのだろう。
たまらなくなる。
膝を抱えて、大きく息を吐いた。
さっきの弟の言葉が思い出される。
彼の言葉は正しい。
もっともだと思う。
気になる人が他にいるわけでもない。
桜井くんのことが原因でもない。
『嬉しい』けど『待って』
ちゃんとした理由も言わず、ただ、そんな言葉だけで。
「……私、すごく滅茶苦茶なこと言った」
襲ってくる自己嫌悪。
『待たせてる間も相手の気持ちは変わらないなんて思わない方がいいと思うよ』
そしてその、丈の言葉。
思い出したら、どきりといやな感覚がして。
「……そんなの、やだ」
ぽつりと、口をついて出る本音。